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こどものきこえと検査

「ことばの発達」と「きこえ」
は関係あるの?

難聴を早期発見するため全国的に出産直後、赤ちゃんが聞こえているかを確認する新生児聴覚スクリーニング検査を行う産科が増えています。生後数日の赤ちゃんに対して、産科もしくは同じ施設の小児科で行われます。
検査は赤ちゃんが寝ている間に10分ほどでできる簡易検査です。では、なぜ産後間もない赤ちゃんに検査をするのでしょうか。新生児聴覚スクリーニング検査を行う理由を説明いたします。

難聴の早期発見と難聴診断後の療育

難聴には生まれつきの難聴(先天性難聴)と、成長していく段階で聞こえづらくなる難聴があります。
先天性難聴の場合、程度があるにせよ、周囲の音やことばが聞き取りづらく、ことばの発達に影響を及ぼす可能性が高いと考えられています。

先天性難聴のお子さんはどのくらいの割合かご存じでしょうか。両耳ともに難聴である先天性難聴のお子さんの割合は1000人に1~2人と言われています。片耳のみ難聴のお子さんも同程度の割合とされています。ひとえに聞こえないといっても、聞こえ方には程度があります。

聞こえのレベルによる難聴の特徴
軽度難聴 1対1の会話では困らないが、小さな声や騒音化での会話の聞き間違いや聞き取りづらさがある。補聴器の適応となることもある。
中等度難聴 普通の大きさの声での会話の聞き間違いや聞き取りづらさがある。補聴器の適応となる。
高度難聴 耳元で大きな声で言えば何とか聞き取れることもある。補聴器を用いないと会話が聞こえない。しかし、聞こえていても聞き取りに限界がある。
重度難聴 大きな音も聞こえない。補聴器でも聞き取れないことが多い。人工内耳の装用が考慮される。

参考
きこえのしくみ
聞こえの検査

難聴がみつかったら・・・

たとえ軽度難聴や片耳難聴でも口の動きが見えなかったり、複数での会話や周りが騒がしかったりすると内容が理解できないことがあります。
また、初めて聞くことばは、理解しにくく、なかなかイメージしにくいと言われています。このことから、たとえ少し聞こえにくい軽度難聴や片耳難聴でも早く難聴を見つけてあげることが大切です。
成長段階で聞こえづらくなる難聴には、進行性難聴や中耳炎を繰り返すことによる聴力低下などがあります。新生児聴覚スクリーニング検査で聞こえが正常だったとしても、成長段階でも「聞こえは大丈夫かな?」と気にかけてあげることが大切です。
難聴が見つかった場合は、すぐに補聴器の装用と同時に療育(発達支援)も開始します。

補聴器に慣れることから始めて、装用開始後、今まで聞こえなかった音が聞こえるようになったか、音に対する反応が良くなってきたかを実際に楽器や音の出るおもちゃを使って音に対して反応があるかリハビリの時に確認します。
また、保護者に対してはお子さんへの関わり方や悩み事がある場合それに対してアドバイスすることや、周囲との関わり方を提案することもあります。
難聴が高度~重度の場合、補聴器を使ったとしても音声言語でのコミュニケーションが難しく、補聴器の効果がみられないこともあります。その場合は、人工内耳の検討が必要になります。
人工内耳は手術により耳の蝸牛と呼ばれる場所に電極を挿入して取り外しのできる補聴器の形に似た体外装置(プロセッサ)を使って音を聞く医療装置です。詳しくは『人工内耳』をご参照ください。

「きこえ」と「ことば」の関連性

赤ちゃんは生まれた後、すぐにお話しできるわけではありません。意味のあることばを言うまでには1年程かかります。その間、赤ちゃんはお母さんや周囲の人の声を聞き、ことばという存在を理解していきます。
ことばを理解していく段階で、きこえにくい場合、ことばの存在を認識できず、ことばを言うまでに時間がかかることや、ことばを発しないことがあります。

きこえ以外にも運動面や社会性もことばを育むためには大切です。運動面、社会性と言語が順序良く発達していくことでことばは増えていきます。どれか一つの能力が飛びぬけて成長していくわけではありません。
その他、ことばを話すようになる要素として、たくさん泣くことも大切です。泣いている中でも「おなかがすいた」「おしっこが出て気持ち悪い」「どこかが痛い」「どこかがかゆい」など、状況によって泣き方が変わります。その時に大人が「おなかすいたね」「おしっこが出て気持ち悪いね」と子どもの気持ちを代弁して伝え、気持ちを共有することが大切です。

また、お散歩のときに犬を見て「ワンワンだね」と一緒に同じものを共有し話しかけすることもことばが増えていくのに大切な力になります。このように大人が丁寧にかかわることで赤ちゃんは理解できることばを増やしていきます。

お話することばが50語くらいになると、急速にことばが増えてくると言われています。舌や口の動きは発達段階なので、発音ははっきりしないこともありますが、自分が話したことばで大人が喜んでくれることや理解してくれたとわかると、どんどん増えていきます。
先天性難聴のお子さんでも先述のような感情表現はできます。難聴があるので「聞こえないから話しかけても分からないだろう」と思って、何も話しかけないということは避け、聞こえるお子さんと同じように関わることで、気持ちを伝える手段があること、表情だけでも相手に伝わることを理解し、大人とのコミュニケーションを楽しみます。

家庭でできる「きこえ」の検査

耳鼻咽喉科で行う聞こえの検査の他に、乳幼児健康診査でも聞こえの確認を行います。4ヶ月、10ヶ月では、母子手帳や事前に保健センターから送付される質問紙に聞こえに関するチェック項目があります。
1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査では、ささやき声検査、指こすり検査を自宅でチェックし、その結果や様子を健康診査の時に小児科医や保健師が確認することになっています。

ささやき声検査 ・後ろからささやき声でお子さんの名前を読んで反応があるか確認する
・口元を隠して動物の名前を言い、反応があるか確認する
指こすり検査 耳のそばで親指、人差し指、中指をこすり合わせて振り向くなど反応があるか確認する

検査の実施方法は、「さっぽろ子どもの聞こえ相談ネットワークを作る会」が分かりやすくYou Tubeで紹介しています。お子さんの聞こえが気になるときに見てみましょう。
指こすり検査に関しては首がすわっているお子さん(3ヶ月以降)であればできますし、道具が特に必要ない検査なので、聞こえが気になった時にすぐ行えます。

さっぽろ子どもの聞こえ相談ネットワークを作る会

機器を使った詳しいきこえの検査は当院でも行っております。聞こえが気になったならご相談ください。

家庭でできる『きこえ』のチェック

『きこえ』の発達には個人差があります。参考程度にとどめてください。

0~1か月頃 ・突然の音にビクッとする
・眠っていて突然の音に目を覚ますか、または泣き出す
2~3か月頃 ・眠っていて急に鋭い音がすると、ビクッと手足を動かしたりまばたきをする
・テレビのコマーシャルなどの音に顔(または眼)を向けることがある
・怒った声や優しい声、歌や音楽に不安げな表情をしたり喜んだり
 嫌がったりする
4~6ヶ月頃 ・名を呼ぶとゆっくりではあるが顔を向ける
・耳元に目覚まし時計を近づけると、コチコチという音に振り向く
・父母や人の声などよく聞き分ける
・話しかけたり歌を歌ってやるとじっと顔を見ている
・ラジオやテレビの音に敏感に振り向く
7~9ヶ月頃 ・隣の部屋の物音や外の動物の鳴き声などに振り向く
・叱った声(メッ、コラなど)や近くでなる突然の音に驚く(または泣き出す)
・きげんよく声を出しているとき、まねてやると、またそれをまねて声を出す
・耳元に小さな声(時計のコチコチ音)などを近づけると振り向く
・「オイデ」「バイバイ」などの人のことば(身振りを入れずにことばだけで命じて)に応じて行動する
・音楽や歌を歌ってやると、手足を動かして喜ぶ
10~11か月頃 ・「ママ」、「マンマ」または「ネンネ」など、人のことばをまねて言う
・気づかれぬようにして、そっと近づいて、ささやき声で名前を言うと振り向く
・音楽のリズムに合わせて体を動かす
・「…チョウダイ」というと、そのものを手渡す
12~15ヶ月頃 ・となりの部屋で物音がすると、不思議がって、耳を傾けたり、あるいは合図して教える
・簡単なことばによるいいつけや、要求に応じて行動する
・目、耳、口、その他の身体部位をたずねると、指をさす

引用)田中・進藤式聴覚発達検査表の一部改変して掲載

お子さん対象のリハビリテーション(言語聴覚療法)

当院では0才からきこえやことばに不安のあるお子さんを対象に言語聴覚士による言語発達支援を行っています。
現在通院されているお子さんは、難聴や発音が不明瞭、吃音の方が多いです。それぞれの症状によって支援の方法は変わってきますが、ここでは難聴のお子さんを対象とした言語発達支援の紹介をいたします。

0歳で難聴が発見された場合、まずは補聴器を装用し、音を聞く環境を整えます。リハビリ時には音の出るおもちゃや楽器を使って、音の存在を知ってもらい、音に興味を持ってもらう働きかけを行います。その他、ことばの発達を円滑に進めるため、それぞれの家庭での生活スタイルに合わせた関わり方の提案をさせていただきます。
ことばの成長のお手伝いを行うとともに、発音の練習や他者との関わり方など、お子さんと保護者のサポートを行っております。ことばに関する相談は難聴に限らず受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。